村田沙耶香『世界99』の読書録
《村田 沙耶香(著)(2025)『世界99(上・下)』集英社》の読書録です。
あらすじ・概要
- 優れた遺伝子を持つラロロリン人と平凡な人、先進的ですばらしい『ガイコク』と愚かで遅れた「ニホン」、消費する男と消費される女
- 盲目的に信じられ、協調を強いられる様々な社会構造は実は不安定で、人々が思い描くものとは実態が異なる、脆弱なものである
- やがて世界の常識は逆転し、真実を少しずつ露呈し始めた人類は、秩序の崩壊を防ぐための均衡装置であり、新しい解釈のための試金石である、人造ペットのピョコルンを拡張していく
どこに特徴を感じたか
- 人が時々(特に日本人が)感じうる、人間社会における、よくよく考えたら不条理にも思える暗黙知・暗黙の了解
- 性差、家父長制、同調圧力、コミュニケーションの負担、形骸化したルール、マイノリティの排除、生存のための妥協
- そういったものごとへの違和感
- 物語を人体とらえると、違和感は腫瘍なようなもので、これがどんどんグロテスクに膨らんでいき、全体が不気味な化け物のように見える
どこに面白さを感じたか
- ピョコルンとララリロン人によって齎された世界は疑われることなく、新しい教条として世界に広がっていく。クライマックスで描かれる「儀式」はまさに、判定装置の不在となった宗教的世界を表現している